弁護士費用の過大請求

 三菱自動車の脱落事故訴訟の原告代理人を担当した弁護士が、報酬の過大請求が原因で懲戒処分にされていますね。記事はこちら→ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100601-00000093-mai-soci 
 賠償として回収したのが550万、弁護士費用が2000万超では遺族も怒りますね。ただ、金額の多寡もさることながら、今回は金額だけが問題ではなかったようです。
 問題となっているのは「着手金」ですが、通常は事件委任のときに支払われるものです。一般的には、目標として設定する経済的利益の額に対して、各事務所所定の割合をかけて算出します。本件では、どうやらこれが判決確定後の段階で請求され、回収した賠償金全額がその支払いに充てられるところだったようです*1
 何が問題かというと、着手金の後回し請求の場合における計算方法だったのではないかと思います。事件の着手時点では、依頼者に資力がなかったり、難易度や争いの程度などが分からないこともあるので、着手金相当額を後回しにしてお支払いいただくこと自体は、普通とは言えないものの場合によってはそういうケースもあります。が、後回しにした場合、算定の方法には注意が必要になります。算定の基礎となる「経済的利益」は、事件以来の時点ではあくまで見込み数値ですが、事件終結時では事件処理の結果から確定値になって明らかになってしまっています。このような場合に、当初の見込値のほうを算定基礎にするというのは、依頼者にとって非常に分かりにくく、説明しても納得しがたい内容ではないかと思います*2。よほどしっかり説明して納得の上でなければ、請求しがたいもののように思います。契約書はどのようになっていたのでしょうか。そもそも契約書は作られていたのかもやや心配です。
 ちょうど、事務所の佐々木弁護士と話をしていて、ある事件の着手金算定が話題にのぼっていたので、このニュースも目に付きました。
 見積をしっかり作成し、依頼者に弁護士費用の計算方法をきちんと説明し、納得してもらうという当たり前のことに、当たり前のように気をつけなければならないという教訓ですね。

*1:別の新聞ではそのような報道もありました

*2:ほとんどの場合、事件の結果として現れる経済的利益の額より、依頼時の見込額のほうが大きいです。事件の進行にしたがって、どうしても譲歩して話し合いという段階も来るので、心理的に高め請求を選択されることが多いのでしょう。たとえ、弁護士がその額について特にアドバイスをしなくてもそのような傾向があるように思います。