神戸地裁尼崎支部の破産手続

 破産と言う言葉のイメージは,財産が破れると書くわけで,とにかくイメージが悪いです。しかし,個人の倒産処理制度が各種整備されつつある中でもやはり破産が最も使いやすい制度だと思っています*1。簡易迅速,根本解決という要素があるからです。
 ところで,最近の神戸地方裁判所管内では,破産を申し立てても弁護士や本人が一度も裁判所に行くことなく事件が終了することが多い運用になっています*2
 逆に,裁判官が特に問題ありと考えたケースのみ,個別の面接が実施されています。このような個別面接を実施するかどうかはそれぞれの裁判官の裁量にゆだねられているのですが,どういうわけか神戸地裁尼崎支部では,そのような面接が行われる可能性が極めて高いと言われています。他の庁に比べて,破産に厳しいというのです。事件を早く処理してしまうためには,全くありがたくない運用なのですが,当然功罪がありまして,弁護士としても「ありがたい」「必要だ」と感じるときがあります。
 例えば,面接をするような事案では,債務が発生した経緯,それが次第に膨らんでいった経過,支払不能に陥った状況について,時系列をふまえながら,申立人本人の記憶を喚起させ,その時々に自らがとった行動について申立人に評価させます。申立人も時に答えに窮したりしながらも真剣に答えた末に,裁判官から「これからは頑張ってくださいね」とエールを送ってもらうと,申立人に問題を意識させつつ,経済的更生を図る糸口になる場合があります*3。こんなときは,「この人のためになったな」と思うことがあるのです。

*1:もちろん,現在住んでいる持ち家をどうしても手放したくないとか,いろいろなニーズに対応するため,個人再生などの諸手続もあり,それらの有用性を否定するつもりはありません

*2:以前は,破産決定をもらうために面接を受け,その後も免責決定を受けるために面接を受け,と二度も依頼者を連れて裁判所に行っていました。

*3:弁護士としては破産者=依頼者なので,厳しく指導しきれないときがあります