修習生ブログ

 司法修習生というのは、ある意味で、とても窮屈な立場に置かれているもので、その人の感じ方にもよるでしょうが、ガチガチに管理されて息苦しいという面もあります。その一方で、司法修習は、社会の実相に触れるものですから、その修習生がそれまでの人生では体験しなかったような新鮮な事実に巡り会うこともまたあります。感受性の強い人であればあるほど、いろいろな思いを持つことがあるだろうと思います。そんなときに、何処かで自分の思ったこと、感じたこと、言いたいことを吐露したいと思う気持ちには理解できる点があります。
 あのブログ記事そのものが守秘義務に違反するか、秘密の漏洩として問題なのか、といわれると、僕としては微妙ながら消極意見です。表現力に着目した批判もあるようですが、ブログというのはその全体的なスタイルや読者層などから、文体もいろいろです*1。「〜まくり」という表現は、若い修習生が使うならまあ変とまではいえないかな、と。それほど表現力が稚拙とまでも思いませんでした。
 むしろ、足りないと思ったのは感覚的なところでして、「これは大丈夫」、「これはリスクあり」といった嗅覚が働いていないんだなと感じました。これは経験に裏打ちされて磨いて行く感覚なので、社会経験の浅い司法修習生としては致し方ないところなのですが、それでもあえて発言していくということをするのなら、慎重な検討は大切なのだろうと思います。
 また、慎重な判断の結果、あえてリスクを取るということになったならば、次に、発言の内容・構成をどうするか問題になります。が、問題の修習生は、この部分についてもあんまり考えてないように思われました*2
 僕も、この修習生の言いたいことは分かるのです。文末や文章全体を読もうという気があれば、おそらく記者さんも理解可能だったはずです。でも、政治もそうですけど、読み手にも意図があります。リスクある場面で、読み手に他の読み方を許す文章は避けなければなりません。このあたりことは、司法試験受験で培うテクニックでもあります。司法試験のあの膨大な論文試験。設問で問われていることを自分が理解しており、当該設例に適用できていることを、自分の文章で試験官に伝えるため、どのような文章構成を採用して、分かりやすく簡潔に書くか、というあの訓練です。
 こういった観点で見てくると、あのブログ記事は、いささか脇が甘く、読者によっては真意と異なる捉え方をされる虞があったといえるでしょう。せっかくいい感覚をもち、それを他人に知ってもらいたいという立派な志があるのに、リスクを自ら拾ってしまうような構成を採用したのも失敗だったと言わざるを得ないでしょう。
 しかし、この修習生が感じて伝えたかったのだろう疑問や思いといったものは、今後も大切にしてほしいですね。問題のブログは閉鎖されてしまったようですが、遠くない将来、成長した情報の伝え手になって戻ってきてもらいたいものです。
 ところで、余談ですが、守秘義務違反で何らかのペナルティが検討されているという報道があります。報道の端緒がどこなのか、少々気になるところです。まあ、ホントに余談ですけど。

*1:2ch用語を使ったりするブログもありますし、mixiなどでもまた違うでしょう

*2:個別性がある程度高い属性情報や、具体的な表現の部分などが、それぞれ必須だったか、というあたりです