建物明渡請求

相談前

 伊豆さん(仮名)は地主さんです。自分の土地に貸ビルを建て,賃料収入で生活されています。
 ところが,最近,借主の飲食店から家賃が入らなくなり,滞納は10ヶ月に及びます。伊豆さんとしては,そろそろ退去してほしいと考えています。ちなみに家賃は月額40万円。退去時に返還を約束している敷金は200万円でした*1。土地の価格は1000万円,建物の価格は600万円です。

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 タウンページを見て事務所に来られた伊豆さんは,交渉の経過をつぶさに説明してくれました。
 借主の業者は,滞納を改称する徳地では約束するものの,期限になるとなんだかんだと理由を付けて支払をしようとしないようでした。そのくせ営業は続けていて,それなりにお客さんも入っているともいいます。一度,伊豆さんが強硬な態度に出たときなど「いざと成れば,簡単には追い出せないかもしれませんがいいんですか」と逆に凄まれたこともありました。事情を聞いた弁護士としては,滞納を話し合いで解消することは困難であり,しかも,伊豆さんが法的手続に打って出た場合,妨害を試みてくることも考えられると判断しました。伊豆さんから委任状を頂き,委任契約を締結して,弁護士が代理人として活動を開始しました。

解決への流れ

 弁護士から借主に対して受任通知という文書を発しました*2。その後,弁護士は借主と交渉しましたが,誠意ある回答は得られず,かえって開き直っている様子がありました。そこで,弁護士は管轄裁判所に占有移転禁止の仮処分を申立て*3,その発令を受けた上で,同じ裁判所に対して建物明渡等請求訴訟を提起しました。すると,第3回期日に裁判上の和解が成立し,翌月末に建物を明け渡すこと,滞納分(400万円)*4から敷金を控除した残額を5回分割で全額返済することなどが決まりました。弁護士は伊豆さんに結果を報告し,分割金を全額受け取ってから弁護士報酬と立替費用を精算して,残額を伊豆さんに引き渡しました。建物は和解が成立した日の翌月から新たな借主が見つかり,伊豆さんも安心して暮らせるようになりました。

ちなみに弁護士費用

 この事例では,着手金は52万5000円(税込み),報酬金は77万7000円(税込み)が標準的な報酬額になります。報酬金は返還を免れた敷金及び相手方から支払を受けた賃料から支払いましたので,伊豆さんの手元には,占有を解かれた土地建物と320万円余りの現金が残ったことになります。

*1:関西では敷引といって預け入れた敷金のうち相当額は返還されません。法的な問題はいろいろありますが,この例では簡単にするために触れません。

*2:賃料滞納を理由に賃貸借契約を解除し,併せて滞納賃料等を請求します

*3:仮処分命令の発令時には,担保として240万円を供託しました。このお金は後日払い戻されます。

*4:相談時と和解時の滞納額が一緒ですが,事案を簡単にするためですのでご容赦を