どっちがいいかな?

設例と回答

ある弁護士から聞いた話*1。打ち合わせ室にて
弁護士「この点については、どうだったのですか」
依頼者「○○でした」
弁護士「この証拠によると、△△というほうがどちらかといえば自然ですけど、なぜ○○だったのですか。」
依頼者「△△だったかもしれません」
弁護士「詳しく覚えていないのですね。△△だったとすると、相手方の□□という主張との関係で若干問題がありそうですが、当時、そのあたりについては気になりませんでしたか」
依頼者「どう答えればいいですか」
弁護士「?」
依頼者「いや、実際は○○なんだけど、弁護士さんが色々問題を指摘するから困るんですよ。結局、どっちにしたらいいんですか(やや逆ギレ気味)」
弁護士「・・・*2・・・○○と答えてください*3

解説

 打ち合わせでは、本当に自分の記憶していることを弁護士に話して下さい。弁護士と依頼者が腹を割って話せていないと、認識不一致でろくなことがありません。
 また、事実は一つで、そこに存在しているものです。記憶も、曖昧な部分を残してではありますし、頭の中で変換されていることもしばしばながら、依頼者の中に一つだけ存在しているものです。戦略的な選択の結果として提示されるものではないと思いますので、そこんとこよろしく。
 事件当事者である本人が、記憶と異なることを法廷で述べた場合、偽証罪には問われませんが、過料という制裁を受けることがあります。偽証にならないからと言って、安易に事実と異なることを述べるのは危険ですからゼッタイに止めましょう*4

追伸

 「では、あなたに有利なので△△と答えましょう。グフフ」
 「弁護士さんも悪党ですな〜。グフフフ」
 「いえいえあなた様にはかないません。グフグフフ」
などと、悪代官・越後屋コントみたいな打ち合わせをやったらどんな気分なんでしょうねえ。たぶん、裁判には負けて、弁護士もバッチを失うんでしょうね。お〜怖。

*1:当事務所の話ではありません。

*2:弁護士たるもの、ここで「なんだよ。まず、実際に何があったのかを教えてくれ。味方同士で腹のさぐり合いしてどうすんだ!」などと怒りたいのも当然なんですが、あえて淡々と→

*3:←このあとも淡々と行きます。淡々と。聞かれたら理由を話すでしょうけど、それなりの気力体力が必要みたいです

*4:制裁があるという理由だけでなく、事実をきっちりと説明することをはじめから放棄するようなもので、もったいないからです。一見自分に不利なような事実があったとしても、よ〜く考えてみたり角度を変えてみてみたりすると、不思議と自分に有利な解釈もありえたりします。それを発掘せずにやめてしまうと、思わぬところでほころびが出てくるものなんです