改正少年法の運用状況

いまのところ,抑制的な運用がなされているようです。原則逆送とされる事件についても,非行事実と要保護性という観点から逆送が相当でない場合には,保護処分をもって臨むべきだと思います。少年院で行われる矯正教育と刑務所で行われる矯正処遇には大きな差があると思っています。

改正少年法:14〜15歳少年の起訴は5人
 法務省は31日、改正少年法の施行(01年4月)から5年間の運用状況をまとめた。刑事罰の対象年齢が16歳以上から14歳以上に引き下げられたのに伴い、14〜15歳の少年5人が起訴された。強盗強姦(ごうかん)罪などに問われた1人と道路交通法違反の2人は有罪が確定。傷害致死罪の2人は少年院送致になった。故意の犯罪行為で人を死亡させた16歳以上の少年は検察に送致し刑事裁判を受けさせる制度(原則逆送制度)も設けられたが、対象者349人のうち逆送されたのは216人。

毎日新聞 2006年6月1日 東京朝刊

なお,被害者の処罰感情を重視すれば,成人と同様の刑事事件にして懲役などの有罪判決を与えるのも一つでしょうが,被害者の不満はもしかしたら自分たちの声が十分に加害者の処分手続に反映されないことにあるのではないでしょうか。この点では,少年事件の方が,調査官を通じる,審判官と面談する,審判邸で意見を述べるなど,被害者の声を反映させる手段が豊富にあります。被害者の問題と原則逆送という厳罰化路線は必ずしも必然の関係で結びつかないような気がしています。