弁護士就職難の時代へ

この記事は完全に愚痴です。でも,50期代の若手の多くは同じ愚痴をこぼしているはずです。

こんなはずじゃなかった。

http://www.zakzak.co.jp/top/2006_08/t2006080736.html
こんな法曹界を夢見て司法試験を受けたわけではないのです。今からでも,司法改革の問題点は洗い直して,制度設計をやり直すべきだと思います。既に,地方では発生する紛争の数に対して弁護士の数が飽和しつつあるという印象があります。地方の中規模都市への開業を薦めるシンポジウムなどもありましたが,僕のイメージでは人口が10分の1になれば紛争の数は100分の1になるイメージです。弁護士過疎と言われた地域にも,既に日弁連ひまわり基金などの成果で法律事務所が開業しています。現在の弁護士人口約2万人に対して毎年3000人を追加していくというのは,いったいどこに受け皿を求めているのでしょうか,理解に苦しみます*1。増えすぎた弁護士が仕事を奪い合い,弁護士資格を持っていても弁護士登録を手控えて会社員として生活するような時代が本当に差し迫った今そこにある現実の危険として存在しているのです。

未来予想図

弁護士がどんどん増えればどうなるか。腹立ちまぎれに,一つの暗い未来を予想してみます。
就職難で仕方なく修習終了後すぐに自力開業する弁護士が急増する。裁判所がなかろうが,駅から遠かろうがお構いなしに,弁護士事務所が乱立する。今までだったら,若手の独立には単位弁護士会や他の弁護士からの協力が期待できたけど,競争の時代となってろくなバックアップは得られない。そこで,事件を探してあくせくする中で,寄ってきた筋の悪い事件に引っかかり,問題を起こす若手弁護士が多発。そのうちのどれかが新聞のネタとなり,弁護士バッシングがまきおこる。これまで問題事例には独自の懲戒制度で対応してきた弁護士自治の限界が叫ばれ,弁護士も法務省の監督下に置かれるようになる。他方で,外圧を受けた政府が,司法についても門戸開放し,海外の弁護士資格があれば日本でも弁護士業務が出来るようになる。海外のビッグローファームが日本に進出し,日本の司法試験合格者は翻訳者として安月給で事務所に採用されるようになる。それでも応募者が殺到する。。。。ああ,暗い。暗すぎる。

依頼する側にとっていいことなのか

弁護士が増えれば競争が始まり,弁護士費用は安くなっていく。依頼する側にとってはいいことにも思えます。でも,安かろうは「悪かろう」です。医師にしても弁護士にしても,人のやりたがらない*2仕事を一定の品質を保証しつつ提供するからこそ,安くない報酬を得ているのです*3。そこには,サービス提供側に一定の余裕がなければ成り立たない部分が少なからずあると思っています。自分の生活に汲々としているような者に,他人の生き死にに関わる病気やトラブルをじっくり検討して解決する業務ができるでしょうか。

*1:いわゆる渉外事務所という分野には今後とも多数の求人が出るでしょう。でも,この仕事は今の司法試験や司法修習が想定して指導している業務とはほとんど関連がないのです。裁判所で裁判をするという業務はほとんどないはず。だから,個人や国内の会社の紛争を解決するという一般的な弁護士業務に携わることを希望する人にとっては求人がすぐに増えることはないと思います

*2:血を見る,人の生き死にに関わる,難しい,常に批判に晒される,常に研鑽を怠ることが出来ない,ものを創る仕事に比べれば後ろ向きに見える,トラブルに巻き込まれやすい,,,,などなどの要素が共通していると思います

*3:ロースクール制度を輸入したことで,一定品質保証の要素は既に失われつつあります