和解について

判決を控えてぎりぎりの交渉を続けていた事件で和解が決裂しました。
裁判上でする「和解」というのは、当事者がそれぞれ譲り合って(互譲)、紛争解決のための合意をして裁判を終わらせることです。
和解には、

    1. 判決に比べて柔軟な解決方法が採れる点
    2. 迅速に事件が解決する点
    3. 相手方から任意の履行を受けられる確率が高い点

などいくつかメリットがあります。裁判所としても正式な判決文を作成するよりも、当事者同士の話し合いで事件が解決することを好むものです。弁護士としても紛争解決を委任されているので、解決は早いほうがいいと言う意味で、和解を積極的に活用することが多いです*1
事件が和解交渉の段階に入ると、弁護士は、裁判所の出す判決を予想しながら、話し合いの機運を探り、依頼者に有利な解決を導くように和解交渉を行います。
もっとも、依頼者の希望を無理に曲げさせて、不本意な譲歩や和解をしてみても「納得しての紛争解決」ということにならず、紛争の火種はくすぶり続けるものです。依頼者と裁判所、相手方の考え方がそれぞれで、なかなか妥結点が見いだせないような場合は、無理に和解する必要はありません。むしろ和解すべきではない事例もあるでしょう。今日はそんなことを考えました。

*1:ときおり、「和解にした方が弁護士も手間が省けるんですか」という質問を受けることがありますが、答えは「そうでもありません」としています。裁判所と違って、弁護士は訴訟のはじめから、裁判所を説得するためにたくさん書類を書いて出しています。このため、和解が出来ずに判決まで行ったとしても、もはやそれほど労力が変わるわけではありません。むしろ、和解交渉が長引く方がいろいろと大変なことが多いです。少なくとも書類作成や検討の手間を省くために和解を勧めるということはありません。