証券会社の対応にはうんざり

 個人情報保護法という法律が完全施行されて以降、金融機関などが、保有している情報を囲い込んで紛争解決のための情報開示を不登に拒む傾向が顕著になっています。先週も、亡くなった方の取引先証券会社へ電話して、支店担当者と交渉していたのですが、お決まりの情報非開示対応をされて、うんざりさせられました。

弁護士  「遺産分割の裁判のため、故人が証券会社との間でしていた取引の内容を開示して」
証券会社 「わかりました。全員の戸籍と同意書を出して」
弁護士  「相続人のうち何人かはお互いに裁判をしていたりして絶対に協力しないらしい」
証券会社 「それでは、情報を開示することは出来ない」
弁護士  「裁判所から情報開示を求められれば開示する?」
証券会社 「相続人全員が同意すれば開示。一人でも同意しないなら裁判所からの要請でも開示しない」
弁護士  「協力しない人がいるから裁判になるんだけど、裁判所の要請にも従わない理由は?」
証券会社 「同意がないと開示できないことになっている」

 これ以上は馬鹿馬鹿しくて押し問答する気にもなりませんでしたが*1、金融機関は往々にして「相続人全員の同意」を要求します。そもそも相続人全員での話し合いが出来ないから弁護士事務所なり裁判所なりへ行くというのに、全員が一緒にハンコを押さなければ、遺産の内容について教えないというわけです。これでは、紛争が解決しないように証券会社が積極的に妨害しているのとほとんど一緒です。証券会社の考えていることはほぼひとつ<相続の揉め事に巻き込まれたくない>ただそれだけです。しかし、求められているのは客観的なデータの提供であり、しかも、データを求める側は、そのデータの権利者である故人の相続人なのです。相続人は故人の権利義務を承継する人なんですから、相続人にとって見れば自分の情報でもあるわけです。それを秘密にする利益などないか、あったとしても前記のとおり「揉め事に巻き込まれたくない」という程度の利益であり、保護に値しません。僕が担当している弁護士会照会制度の運用でも、証券会社を初めとした金融機関が、同じような対応をしてくることがあり、対応に苦慮しています。法的には明らかに開示の義務がある場合でも、「揉め事に巻き込まれたくない」というだけで、情報を秘匿する金融機関にも、コンプライアンス委員会とかがあったりしますから失笑してしまいます*2

*1:最後に、「裁判で遺産を取得する人が決まったらその人へは預っている証券を渡すんでしょうね」と聞いてやったら、「それは渡します」と言っていました。だれが遺産を取得するか、どうやって分けるかを決めるために必要な情報を開示しないくせによく言うな〜、と思いあきれましたが、窓口の若い担当者はあんまり経験がないようで、すべての質問に対していちいち電話を切り、上司に聞いてから掛けなおしてくるような方でした。しつこくしていると、いじめているみたいになってもかわいそうなので、質問は切り上げましたけど。ふう

*2:今日は、某著名ブログみたいに皮肉調で終始してしまいました。書きなぐりお許しください。なんだか腹が立っちゃって。。。。