法廷イラスト

 奈良地裁で審理中の刑事事件について、裁判長が、法廷でのイラスト作成、画材の持ち込みを禁止して話題になっています。
 開廷前のわずかな時間しか法廷の静止画、動画の撮影が認められないわが国の運用では、審理中の法廷内の様子を報道するために、法廷イラストの存在が欠かせないものになっています*1。今回は少年の刑事事件それも裁判員裁判ということで、裁判長が事前に法廷イラストの内容を規制、これに反するイラストを掲げた新聞があったことを理由に、次の期日からはイラスト作成そのものを禁じた形になったようです。
 問題となるのは、この辺りの規定です。

 少年法 
(記事等の掲載の禁止)
第六十一条  家庭裁判所の審判に付された少年又は少年のとき犯した罪により公訴を提起された者については、氏名、年齢、職業、住居、容ぼう等によりその者が当該事件の本人であることを推知することができるような記事又は写真を新聞紙その他の出版物に掲載してはならない。

 刑事訴訟法 
第二百八十八条  被告人は、裁判長の許可がなければ、退廷することができない。
2  裁判長は、被告人を在廷させるため、又は法廷の秩序を維持するため相当な処分をすることができる。

 注目され、敏感にならざるを得ない要素がたくさんありそうな事件ですが、あまり硬直的な対応になると、憲法問題*2を掘り起こす可能性もなくはないように思えます。思わず、レペタ事件を思い出して、百選*3を眺めてしまいました。
 ちなみに、この橋本裁判長は、以前、神戸地裁本庁におられたので、僕の事件も何件か配点されたことがあります。とにかく「熱い」裁判官で、法廷でも声がよく通る。裁判官として、これは大切なことだ、と考えたら、とても強い調子で貫く方だったな、と思い出しています*4
 どんなイラストだったのか、ちょっと気になります。

*1:いつもここから、とか鉄拳とかのネタを見ると、つい法廷イラストを思い出してしまいます

*2:憲法21条とか82条とか、レペタ事件では14条も問題になりましたっけ

*3:司法試験や大学時代に勉強した判例解説集です。

*4:周りの弁護士に聞いても、同じような感想が多かったような。。。