更生保護制度の刷新へ?

 保護観察制度の疲労ぶりが指摘されて久しいですが,問題意識はみんなが持っていたはずです。ついに制度改正の提言がなされたようで一安心です。
 保護観察経験のある少年から「あ〜,2週にいっぺんくらい,近所の爺ちゃんの家に行って茶飲み話につきあう,ってあれでしょ」という答えが返ってくるのが現状なんです。制度がどの程度機能しているかは推して知るべし。専門家職員である保護観察官が処遇を直接担当しているケースはきわめて少なく,ほとんどは地域社会のお年寄りがボランティアとしてやっている保護司*1が担当しているのです。
 かつての日本のように,地域社会というものが機能していたころであれば,地域のお年寄りや顔役が、保護司として少年や仮出所者の更生を手助けするというのも十分成り立っていた制度でした。しかし,今や地域社会は崩壊し,隣人の見えない世の中になってしまいました。このような状況で高齢の保護司達になにをせよ,というのでしょうか。治安の問題が叫ばれ、保護観察をうけた者の再犯がクローズアップされていますが,治安の問題は矯正,更生の問題と不可分だと思うのです。

(前略)報告書は「更生保護の人的・物的体制は不十分で、民間の保護司に過度に依存し、再犯防止という目的を十分果たしていない」と批判。その上で▽保護観察対象者に保護司らの訪問を受け入れる義務を課す▽順守事項を守らない対象者の仮釈放や執行猶予を取り消す▽一定期間、更生保護施設に宿泊させて処遇プログラムを受けさせる「居住指定制度」を導入する−−などの保護観察強化策を示した。
 さらに現場で実務を担当する保護観察官(約650人)を倍増させ、専門家としての能力アップも求めた。高齢化が進む保護司については、公募を含めて適任者の確保を促した。国立の自立更生促進センターを創設し、民間施設での受け入れが困難な仮出所者に特別な処遇プログラムを実施することも提言した。(後略)
毎日新聞 2006年7月15日 東京朝刊 http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/archive/news/2006/07/15/20060715ddm004070094000c.html

*1:一応,非常勤無給の公務員です