法律事務所襲撃事件

 兵庫県の弁護士事務所に男が訪れ、勤務していた若い女性の事務職員を襲って重傷を負わせるという事件が発生しました。男は逃走しているとのことで、県警は殺人未遂事件として捜査しています。
 (神戸新聞http://www.kobe-np.co.jp/kobenews/sg/0000270036.shtml
 被疑者は特定されていませんが、今回の暴漢はこの弁護士が代理している人の相手方かもしれないようです。記事の中で当会副会長が述べているように、弁護士という職業柄どうしても相手方などから不満や怒りを買うことは避けられず、「どこで恨まれるか分からない」というのが実際です。もちろん、相手方が不満を持ったからと言って、暴力や業務妨害行為に出ていい訳がありませんから、犯人は厳しく処罰されなければならないでしょう。他方、被害に遭われた事務員さんの一日も早い回復をお祈りします。
 さて、このような事件があると、正直、私たちも怖い思いがします*1。しかし、改めて考えてみると、法律事務所を襲撃するメリットなど何もないのです。そのことは次のような点を考えれば明らかでしょう。

  1. 法律事務所に弁護士がいることは稀

 弁護士は忙しいです。一日事務所にいるなんて事はなく、たいてい事務所を離れて裁判所やら現地やらを飛び歩いています。事務所にいる時間の方が少ないくらいで、弁護士に無理矢理面会を求めようにも物理的に不可能なケースが多いと思います。弁護士にアポ無し面談を強要しようと思って事務所に行っても空振りになることが多く、無駄な訳です。

  1. 法律事務所には金がない

 実は、法律事務所で現金を取り扱うことはほとんどありません。ですから、現金のストックもほとんど無いというのが実情です*2。着手金などの弁護士費用は銀行振込にしてもらうのがほとんどですし、依頼者からの預かり金もすべて銀行で管理します。貴重な物や書面を預かることがあっても、銀行の貸金庫などを利用しますので、これらも事務所にはありません。かくて、弁護士事務所に金目のものなど何もないということになるのです。こんな所に侵入してもいいことはありません。

  1. 法律事務所への侵入は足がつきやすい

 恨みなどを抱く可能性のある人は、弁護士から見てある程度把握できます。従って、よしんば事件現場からの逃走に成功しても、犯人の目星はすぐについてしまうのです。最近はセキュリティに関する意識の高まりから、不法な侵入を監視できるようなサービスも多数あります。また、弁護士が事件処理の上で知り合った人物であれば、所在や参考になる情報などをたくさん持っているので、なおさらばれてしまいやすいでしょう。

*1:当事務所でも、万が一の時の対応について協議し、防犯に対する意識を改めて涵養する良い機会になりました

*2:うちの事務所には金庫もレジスターもありません