服装問題より保釈運用の改善

 僕は裁判員制度には懐疑的な気持ちですが、制度導入にあたって色々と試行錯誤が続いていることについては、一定の評価をしています。

裁判員制度:被告の服装パリッと 「外見での不利益」回避
 2年後の裁判員制度導入に合わせ、法廷での刑事被告の服装が大きく変わりそうだ。現在は拘置所規則でネクタイやベルトの着用が禁止されているため、ジャージーなどラフな服装の被告が目立つ。これに対して「外見で被告が不利益を被る恐れがある」と日弁連大阪弁護士会などが主張。法務省も柔軟姿勢に転じ、取り外し不可能なネクタイ付きシャツやベルト付きズボンの着用を認める線で落ち着きそうだ。【川辺康広】(中略) 毎日新聞 2007年5月26日 15時00分

 ただ、この問題も確かに大切なんですけど、被告人に検察官と対等な当事者としての地位を実質的に与え、自身の外見も含めた公判準備を十分にさせようとするのであれば、保釈の運用を改めてもらうことの方が本質的なような気がします。

刑事訴訟法
第89条 保釈の請求があつたときは次の場合を除いては、これを許さなければならない。

    1. 被告人が死刑又は無期若しくは短期1年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
    2. 被告人が前に死刑又は無期若しくは長期10年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
    3. 被告人が常習として長期3年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
    4. 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
    5. 被告人が、被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
    6. 被告人の氏名又は住居が分からないとき。

第90条 裁判所は、適当と認めるときは、職権で保釈を許すことができる。
第91条 勾留による拘禁が不当に長くなつたときは、裁判所は、第88条に規定する者の請求により、又は職権で、決定を以て勾留を取り消し、又は保釈を許さなければならない。

 保釈に関する上記刑事訴訟法の定めを素直に読めば、身柄の解放が原則、身柄拘束を必要以上に長く続けないように、という立法者意思が読みとれると思います。
 しかし、実際は、捜査が終わって起訴もされたが、何だか分からない抽象的な理由で身柄拘束が続き、自分の人生を左右しかねない裁判の準備すら、自由に、そして満足にさせてもらえない状況。これが今の刑事被告人の置かれている状況です。
 学生時分には、刑事訴訟法89条の標題を「権利保釈」と教えてもらいましたし、市販の六法にもそのような記載があり、保釈は起訴された被告人の「権利」のはずなんですが。