高齢者虐待防止法の罰則

 理屈じゃあないのでしょう。高齢の父一人を娘一人で介護していたのなら、精神的にとても大変なのも分かります。そういう生活をしているウチに、社会から孤立して取り残され、気が付いたら後戻りできなくなっていた、という事件の構造を想像すると、なんだか悲しくなります。

高齢者虐待:調査拒否の娘逮捕 防止法を初適用−−西東京
 父親への虐待調査のために自宅に立ち入ろうとした市職員を妨害したとして、警視庁田無署は21日、西東京市柳沢3、無職、岸田澄江容疑者(43)を高齢者虐待防止法違反(調査の拒否)容疑で逮捕したと発表した。06年4月施行の同法違反による逮捕は全国で初めて。「プライバシーの侵害」と供述し、取り調べにほとんど応じていないという。
 岸田容疑者は父親(85)と2人暮らし。昨年夏ごろから父親と連絡が取れなくなり、市職員が再三訪問していた。父親はごみで埋まった室内から病院に保護されたが、けがはなかったという。同署は虐待の有無についても調べる方針。
 調べでは、岸田容疑者は18日、調査に訪れた市職員と警察官を家に入れず調査を妨害した疑い。【伊藤直孝】
毎日新聞 2008年1月21日 東京夕刊

 ところで、刑事罰を見たら罰金のみの刑でした。

高齢者虐待防止法第三十条
 正当な理由がなく、第十一条第一項の規定による立入調査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは高齢者に答弁をさせず、若しくは虚偽の答弁をさせた者は、三十万円以下の罰金に処する

 で、罰金のみの刑で逮捕するのには制限がなかったかな、と思って調べなおしたら、

刑事訴訟法第百九十九条
 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。ただし、三十万円(刑法 、暴力行為等処罰に関する法律及び経済関係罰則の整備に関する法律の罪以外の罪については、当分の間、二万円)以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪については、被疑者が定まつた住居を有しない場合又は正当な理由がなく前条の規定による出頭の求めに応じない場合に限る。

 特別法による罰金刑は、それが2万円以下と規定されている場合のみ、逮捕の制限があったようです*1。それにしても、「当分の間」って・・・・・。

*1:久しぶりにサブノートっぽい記事だな、と我ながら思ったりして