knollさんありがとう

knollさんからのコメント*1をきっかけに連想エントリーです。

量刑相場

 軒並み相場が上がっているという感覚です。治安悪化に対する不安が一般予防効果に対する期待感を掘り起こしていて、これを検察庁、裁判所が敏感に察知して求刑と量刑を押し上げているのではないでしょうか。司法に対して「民意の反映」が立派になされている、とは思いませんか?

民意の反映

 ところで、元エントリーにもかきましたけど、最近の法改正は本当に早いです。基本六法だけみてもどんどん改正されていて、原形をとどめないほどになっているものもあります*2。このような法改正の素早さは、民意の反映という点では積極評価も可能かもしれません。
 しかし、立法に反映すべき「民意」の集約と解釈にはある程度の慎重さも求められるでしょうし、時間もかかるはずのものです。あんまり立法活動が活発になされていると、法律で規定すべき事象をピックアップし、これに対する国民の多様な意見を解釈し、集約するという過程をちゃんと踏んでいるのか、疑問を持たざるを得ない*3。よく考えたら既存のスキームの中で十分目的が達せられる話も多々あるんじゃないのか、と。

刑事手続について

 こと刑事に関する限り、民意の反映は検察官によって、及第点が与えられても言い程度には実現されていると思うのですが少数意見でしょうか。検察官の有する起訴裁量*4、検察官による公判活動*5において、民意は一定程度意識されており、専門家が社会の実際の姿意見を無視して学術的な論争や非現実的な活動ばかりしているような批判があるとすれば、ホントかな、と思います。
 もちろん問題もあり、検察庁の人的物的体制に余裕がないことは改善されるべきでしょう。検察官を増員し、かつ、社会全体の意識に対するアンテナを張って、これを意識した活動を励行してもらえれば、十分ではないかと思うのです。また、セーフティネット的な考え方としては、検察官が被害者をはじめとする国民の意見を無視しにくい枠組みを作っていくことです。その意味で、検察審査会の起訴議決が今後どのような刑事裁判を形作るか注目されます。

*1:knollさんコメント抜粋『(前略)思えてきました窃盗の量刑相場もかなり変わりました。数年前なら万引きは起訴猶予相当だったのを、法改正後、起訴するようになってきましたね。当番で見通しを聞かれたときに、甘い感覚で答えないようにしないと。』←いつもありがとうございます。

*2:商法なんて抜け殻みたいになってます

*3:立法府には他にも機能があるわけで

*4:起訴便宜主義といって、日本の刑事裁判では、被告人を刑事裁判にかけるかどうかは、一切の事情を総合考慮して検察官がその裁量で決めることが出来るシステムになっています。検察官としては、当該事犯に対して社会公共の関心が高いか、国民の処罰感情も強いかどうかなども考慮に入れて、終局処分としての起訴不起訴を決めているはずです

*5:起訴された事件で、検察官の論告をよく聞いていれば、求刑をする直前にも、検察官が民意の代表者をもって任じていることがわかる一節があるはずです。世論がその種の犯罪をどのように見ているか、これまでの対応ではどう不十分なのか、この被告人に対して現住処罰することによって何をめざすのか、さらりとですが述べているはずです